ツンとした辛さが特徴の刺身には欠かせない薬味【わさび】

薬味のチカラ 「わさび」と言えば、刺身には欠かせないものですね。
辛いけれど、唐辛子やにんにくの辛さとは違って、鼻にツーンと一瞬抜けて、後を引かないというまた違った辛さを持つ日本を代表する香味野菜です。そういうこともあって、わさびは英語でも「Wasabi」と呼ばれます。
わさび(山葵)は、薬味として使う場合には、本わさびの根茎の部分をすりおろしたものを使うのが一般的です。
市販されているチューブ入りのわさびには山わさび(西洋わさび)の粉末が使われていることが多く、本わさび入りのものとそうでないものがあります。

わさびってどんなもの?

わさび(山葵)は、アブラナ科の植物で、主に地下茎の部分を食用とします。
日常的に薬味として食べられているのは、本わさびです。薬味として使われるものは外国から伝わったものが多い中、本わさびは奈良時代には既に自生していたという記録が残っている日本原産の薬味です。
そのため、学名も「ワサビアジャポニカ」という名称がついています。
日本で言われているわさびは「本わさび(日本わさび)」と呼ばれ、ヨーロッパなどで食べられている「山わさび(西洋わさび)」と区別されています。
本わさびは、その栽培の方法によって「沢わさび(水わさび)」と「畑わさび(陸わさび)」に分けられます。
沢わさびは、水温が10〜17℃に保たれている山間部の沢などの水が綺麗な場所で栽培されます。
生育条件が厳しく、なかなか育たず収穫までに3〜4年程かかるので、沢わさびは大変希少価値のあるわさびと言えます。沢わさびを栽培している沢地は「わさび田」と呼ばれます。畑わさびは、涼しく水分の多い土地に畑を作り、そこで栽培されており、沢わさびに比べると生育も早く、1〜2年で収穫され出荷されます。
わさびは、地下茎の部分を食用とし、すりおろしたものを薬味として利用します。地下茎ほどではないですが、葉や茎にも辛味成分があり、わさび漬けにしたり、天ぷらやおひたしにしたりして食用とします。

《葉わさび》
わさびの葉や茎の部分を「葉わさび」と言います。葉わさびは、沢わさびよりも畑わさびの方を使われることが多く、主に粕漬けや醤油漬けに加工されます。
葉わさびの旬は、冬から春にかけてが一般的ですが、ハウス栽培もされているので、1年中手に入れることが可能です。葉わさびの中でも12〜2月に根わさびに生えた新芽の部分を「ガニ芽」と呼び、新芽で収穫できる量が限られていることから珍重されていて、価格も葉わさびよりも若干高めです。
また、2〜4月のわさびの花が咲く時期に花がついたまま収穫された葉わさびは、「花わさび」と呼ばれ、こちらも珍重されています。

《山わさび(西洋わさび)》
本わさびとは全く別の種類のわさびが「山わさび(西洋わさび)」です。
英語では「horseradish(ホースラディッシュ)」と言います。
山わさびは、「蝦夷わさび」「ホースラディッシュ」「わさびだいこん」「うまわさび」「根わさび」「野わさび」とも呼ばれ、本わさびとは違うものです。山わさびも本わさびと同じように地下茎の部分を食用としますが、本わさびがすりおろすと緑色で若干粘り気があるのに対し、山わさびは白っぽい色で粘り気はありません。栽培に時間がかかり栽培環境が限られている本わさびと違って、比較的栽培が簡単で安価な山わさびは、市販のチューブに入ったねりわさびや缶入りの粉わさびの原料としてよく使われています。
山わさびの割合の多いものは、緑色に着色されていることが多いです。
ちなみに、「本わさび使用」と書かれているねりわさびには、本わさびを全体の量の50%以上使用されていて、「本わさび入り」と書かれているものは50%未満ですが本わさびも使用しているということになります。山わさびは、かつては日本国内でも栽培されていましたが、現在は北海道で少量生産されているだけで、使用量のほとんどは中国からの輸入わさびです。

わさび(山葵)の旬

現在はハウス栽培が普及していることもあり、1年中収穫できるわさびですが、秋から冬にかけて気温が低くなり、葉や茎の成長が止まると、地下茎に養分が集中するので、辛味が他の季節に比べ強くなります。
辛味がより強くなるという点では、秋〜冬の時期がわさびの旬と言ってもいいかもしれません。

わさび(山葵)の産地

本わさびは、日本国内では岩手県、静岡県、長野県、山梨県、島根県での栽培が盛んです。
沢わさびは静岡県と長野県でほぼ9割の生産量を占めており、畑わさびは岩手県での栽培が多く、岩手県だけで全体の生産量の3分の1強を占めています。

《わさび栽培発祥の地・静岡県静岡市有東木地区》
沢わさびの生産量日本一の静岡県には、日本のわさび栽培の発祥の地があります。
現在の静岡市にある「有東木(うとうぎ)」地区は江戸時代の始め頃からわさびが栽培されていたということで、わさび栽培発祥の地のわさび田があるということで有名です。それまでは自生しているものを採取するだけであったわさびを湧水地に植えて栽培してみたことから、わさびの栽培が始まりました。それから約400年経ち、現在も変わらずわさびの栽培が続けられています。

わさび(山葵)のチカラ(効能)

わさびには、優れた消臭効果、殺菌効果があります。
ですから、生の魚を使う刺身や寿司にわさびを使うのは大変理に叶ったことなのですね。
また、わさびには香味成分の効果で食欲を高めると共に、消化液の分泌を促し、消化を助けるという役割もします。
わさびの鼻にツンと一瞬だけ抜けるような辛味の正体は、アリルイソチオシアネート(アリル芥子油)という成分です。わさびの根や葉に含まれているシニグリンという成分が、すりおろされる時に細胞が壊れて酵素と水分により化学反応を起こして生成されるのがアリルイソチオシアネート(アリル芥子油)です。
このアリルイソチオシアネートには、細菌の増殖を抑制する働きがあり、食中毒予防に効果があります。
ただし、アリルイソチオシアネートは揮発性の物質なので、すりおろしてから時間が経つとなくなってしまうので、わさびは食べる直前にすりおろすのがおすすめです。

わさび(山葵)の使われる代表的な料理

寿司、お茶漬け、佃煮

わさび(山葵)の加工品

わさび漬け(粕漬け、醤油漬け)、わさびドレッシング、わさびエール、わさびマヨネーズ、わさび茶、ふりかけ、わさび海苔

わさび(山葵)を薬味にするとピッタリ!の料理

*焼肉・・・焼肉のタレに一緒にすりおろしたわさびを入れて。
*蕎麦・・・すりおろしたわさびをめんつゆにその都度入れて。
*冷奴・・・すりおろしたわさびをのせて、醤油をかけて。
*刺身・・・すりおろしたわさびを刺身にのせて、醤油につけて。
※赤身の魚にはわさびを多めに。
*握り寿司・・・シャリとネタの間に適量すりおろしたわさびを塗って。
*ちらし寿司・・・葉わさびを刻んだものを寿司飯に混ぜ込んで。
*ステーキ・・・大根おろしなどと一緒にすりおろしたわさびを添えて、ソース・醤油・ポン酢などをかけて。
*とろろ・・・すりおろしたわさびとウズラの卵の黄身をのせて、醤油をかけて。

薬味レシピ 〜わさび〜

板わさのレシピ

火を使わずにすぐに作れるわさび料理「板わさ」をご紹介します。
かまぼこの色を変えたり、ちくわやハンペンを代わりに使ったりして、アレンジを加えてもおいしいですよ。
キュウリやイクラ、練り梅などを加えると彩りもよく見た目にも綺麗です。
わさびではなく、わさび漬けを使ってもOKです。

【板わさの材料】
2人分
 【板わさの作り方】
かまぼこ・・・1/2本
わさび・・・適量
  1.かまぼこを1cm位の厚さに切り、ちょうど幅の半分の辺りに切り込みを入れておく。

2.わさびをすりおろす。

3.かまぼこの切り込みの部分にわさびを挟んで、皿に盛り付けて出来上がり。

薬味豆知識 〜わさび〜

「わさび」には「鮫皮おろし」!

わさびと鮫皮おろしわさびは、できるだけ細かく細胞が壊れるようにすりおろせばすりおろすほど良いとされています。 そうすることで、わさびがより辛味を増すという訳です。
その細かくすりおろすにもってこいなのが鮫の皮で作られた「鮫皮おろし」です。わさびは金気を嫌うので、普通の金物製のおろし器ですりおろすと風味も損なわれ、粘りも出ないので、わさびの持つ良さを生かすことは難しいのです。表面が適度にザラザラしている鮫の皮を使ったおろし器が最もわさびと相性が良いとされています。表面に「の」の字を書くようにしてあまり力を入れずにすりおろすと大変風味の良いおろしわさびとなります。