刻んだり、もみのりにしたりして磯の香りをプラスする薬味です【海苔】

薬味のチカラ 海苔と言えば、海藻を紙のように漉いて乾燥させたものが一般的ですね。
ざる蕎麦に海苔を添えて、海苔の磯の香りを楽しみながら頂くというのは海苔の定番の食べ方と言ってもいいでしょう。
実は、海藻を食べる習慣のない外国では、このような食べ物はほとんどなく、海苔を食べているのは、日本や韓国などの一部の国だけです。海苔を初めて見た外国人は海苔のことを紙だと思い、食べ物だとは思わなれないことがとても多いのだとか。ヨーロッパなどでは海苔を「black paper(黒い紙)」などと呼んだりしているそうです。最近では、日本食がブームになってきて寿司の認知度が上がっているせいか、「食べ物」としての認知度も上がっては来ているようです。
海苔を薬味として使う時には、細く刻むか、火で炙った後にもんで細かくした海苔を食べる直前に料理にふりかけて使うことが多いです。

海苔ってどんなもの?

海苔は、海藻の加工品です。
海藻と言えば、昆布やワカメ、ヒジキなどを思い浮かべられる方も多いし思いますが、海苔に使われるのは紅藻、藍藻、緑藻が多く、中でも「アサクサノリ」などの紅藻類ウシケノリ科アマノリ属に属するものが海苔の原料となっています。
私たちが日頃よく食べる黒っぽい紙状の海苔は、板海苔と言って、海藻を紙状に漉いて、乾かしたものです。
その中でも香り・味共に海苔の中で最高と言われているのが、「浅草海苔」です。
現在出回っている浅草海苔は、厳密に言うと「アサクサノリ」を使用したものはほとんどないのですが、昔はアサクサノリを使って浅草で作られたものをこう呼んでいました。
アサクサノリは江戸時代には隅田川の下流で養殖されていて、収穫されたものは浅草で加工され、販売されていました。浅草では紙漉きが盛んであり、その技術が海苔作りにも生かされていたようです。
しかし、江戸湾の干拓などにより海の生態系が変わり、次第に浅草近海ではアサクサノリの養殖が廃れていき、今では自生しているアサクサノリが大変珍しく、絶滅の恐れのある希少な動植物をリスト化した「レッドリスト」にも記載されています。そのため、アサクサノリを使った海苔は大変貴重で、高級品となっています。
現在の海苔の原料として使われているのは、「スサビノリ」という品種の海藻です。

《青海苔》
板海苔と並んで海苔と言えば思い浮かぶのは、「青海苔」の存在ですね。
お好み焼きや焼きそばなどには欠かせない薬味です。青海苔は、板海苔に使われる紅藻類とは違って、緑藻類のアオノリという海藻を原料としたものです。
板海苔のように漉いたものもありますが、乾燥させたものを粉末状にしたものが主流で、アオノリ独特の磯の強い香りが特徴です。そのまま使う他、七味唐辛子の原料に使われることもあります。

《韓国海苔》
日本人もよく海苔を食べる国民ですが、お隣の国・韓国ではもっと海苔を食べます。
1人辺りの消費量にすると枚数換算で日本人の2倍以上は食べているというデータがあるそうです。
実は、日本で食べられている海苔と韓国で食べられている海苔は似ていますが、全く別物なのです。
そのため、韓国で食べられている海苔は日本では「韓国海苔」と呼んで区別されることが多いのですね。韓国の海苔は、「キム」と呼ばれていて、日本の海苔は味付けされていないものが多いのに対して、韓国海苔は岩海苔を塩とごま油で味付けしたものです。
また、使っている海藻も違うもので、日本がスサビノリが主流なのに対して、韓国海苔の原料はオニアマノリなどの海藻が主流です。

海苔(のり)の旬

海苔は現在はほとんどが養殖物ですが、ちゃんとした旬の時期はあります。
海苔の原料となる海藻はきのこのように胞子から繁殖します。春に成長した海藻が受精して果胞子が放出され、発芽したものは夏の間は牡蠣の殻などに入り込み、糸のような形の「糸状体」に成長します。秋になると糸状体は分裂して殻胞子を放出します。これがいわば植物で言う「種」になります。この種を網などに植え付けて、成長させたものを収穫します。この収穫の時期がちょうど冬の時期に当たります。ちょうど寒くなってくる11〜3月ぐらいまで収穫され、摘み取りの最初の時期に収穫されたものを「新海苔」と言っています。

海苔(のり)の産地

日本の海苔の産地は、日本近海です。特に海苔の生産の盛んなのは、瀬戸内海沿岸地域や九州の有明海沿岸の地域です。
瀬戸内海沿岸では兵庫県、香川県が主な産地で、有明海沿岸では福岡県、佐賀県、熊本県が主な産地です。

《「明石海苔」で有名な兵庫県明石市》
兵庫県明石市は明石のタコでも有名な土地ですが、海苔の生産も盛んで、明石海苔の産地として有名です。明石での海苔の養殖が始まったのは、戦後のことですが、大規模経営でしっかりした生産体制が整えられてきたので、全国有数の海苔産地となりました。
瀬戸内海に流れ込む加古川などの河川や明石海峡の流れの早い潮流という海苔を育てるのに恵まれた環境が品質の良い海苔を育てるのです。近隣の市町村でも生産が盛んで兵庫県の海苔の生産は、全国の海苔の生産量の約2割近くを占めています。
兵庫県産の海苔のコンビニおにぎりへの使用量は日本一なのだそうです。

海苔のチカラ(効能)

海苔は、海藻を原料としているので、食物繊維やカルシウムやミネラルが豊富です。
それ以外にも、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンB、タンパク質などが多く含まれていて、栄養成分が非常にバランスよく含まれているのです。
ビタミンCには肌の状態を整えたり、肌のメラニン色素の生成を抑えたりする働きがあります。海苔の食物繊維には、整腸作用があり、糖尿病や大腸がんの予防にも効果的です。
その他に含まれている成分には、疲労回復や貧血予防、骨の機能強化、中性脂肪の減少などの生活習慣病の予防などの効果もあり、海苔は優れた健康食品です。1日に2枚食べるだけで、必要な栄養も十分補えるので、食生活に取り入れたいものです。

海苔(のり)の使われる代表的な料理

おにぎり、海苔巻き、軍艦巻き、お茶漬け、磯部巻き、ラーメン

海苔(のり)の加工品

海苔佃煮、わさび海苔、味付け海苔

海苔(のり)を薬味にするとピッタリ!の料理

*もり蕎麦・・・蕎麦の上にもみ海苔や刻み海苔をのせたり小皿に添えたりして。
*湯豆腐・・・つけダレに刻み海苔を入れて。
*山かけ・・・すりおろしたとろろらもみのりと醤油をかけて。
*お茶漬け・・・もみ海苔や刻み海苔を上からかけて。
*ひつまぶし・・・2杯目は刻み海苔とねぎを、3杯目はねぎと海苔とわさびをのせて。
*焼きそば・たこ焼き・お好み焼き・・・青海苔の粉末を上からふりかけて。

薬味レシピ 〜海苔(のり)〜

鰻のひつまぶしのレシピ

ひつまぶしは、名古屋名物として有名ですね。
うなぎと言えば、蒲焼にしてご飯の上にのせて、「うな丼」「うな重」として食べるのが一般的ですが、名古屋ではうなぎは「ひつまぶし」で食べるのが主流のようです。
うな重とは違い、そのまま食べる→薬味を入れて食べる→お茶漬けで食べるという3段階の食べ方で色々な食べ方が楽しめるということから、最近は名古屋だけでなく、他の地方でも人気の食べ方となってきているようです。

【鰻のひつまぶしの材料】
2人分
 【鰻のひつまぶしの作り方】
鰻の蒲焼(市販)・・・1尾
ご飯・・・茶碗4杯分
刻み海苔・・・適量
青ねぎ・・・適量
わさび・・・適量
鰻のタレ・・・適量
ダシ(鰹節と昆布)・・・2カップ
醤油・・・小さじ1
塩・・・小さじ1/2
酒・・・少量
  1.鰻の蒲焼は、酒を少量をふりかけてグリルなどで温める。焦げるのが気になるようなら、アルミホイルで覆ってから焼く。焼けたら1/3は2〜3cm程度に切り、残りは1cm程度の幅のちょうど良い大きさに切る。

2.鍋にタレを入れて温める。味を見て、必要であれば、醤油や砂糖、みりんなどで味を調える。ねぎは小口切りにする。

3.ダシに醤油と塩を入れて、温めておく。※沸騰しないように気をつける。

4.ご飯に3のタレを入れて満遍なく混ぜる。

5.器に4のご飯を少なめに盛り(量は1杯の8分目程度)、大きめに切った1/3尾分のうなぎをのせて1杯目の出来上がり(うな重)。残りのご飯は、お櫃などに入れて一緒に。

6.1杯目を食べ終わったら、ご飯の残り半分を器に盛り、うなぎを1/3尾分とねぎと海苔をのせて2杯目の出来上がり(ひつまぶし風)。混ぜながら食べるのが一般的。

7.2杯目を食べ終わったら、残りのご飯を茶碗に盛り、残りのうなぎとねぎ、海苔、わさびをのせて、温めておいた3のダシ汁をかけて、3杯目の出来上がり(うな茶漬け)。

薬味豆知識 〜海苔(のり)〜

「海苔」を数える単位は何?!

料亭「千賀」鰻ひつまぶし【快適生活】海苔を数える時の単位に使われる単位は何か知っていますか?
海苔を数える時には、少量の場合は「枚」ですが、大量の海苔の場合は、10枚をひとまとめにして「1帖」と数えます。10枚は「1帖」、20枚は「2帖」と言うように数える訳ですね。
これは、海苔が昔は今のように切った状態でバラバラに売られてはおらず、10枚単位で売られていたことに由来しています。その10枚単位で売られていた頃の数え方が今でも残っているのですね。
海苔を扱う業者の間では、さらに10帖をまとめたものを1把と数えるという習慣も残っていたようです。
ちなみに、海苔の1枚の大きさは、昔は産地や製造場所でまちまちでしたが、現在は規格で縦21cm横19cmの大きさに定められています。